UTAU雛乃木まや ショートストーリー
2017/03/06
さつきべにさんがUTAU雛乃木まやのショートストーリーを書いてくださいました!
す、すごいーーー!!
これめちゃくちゃ良い話じゃないですか〜〜。゚(゚´Д`゚)゚。
やばいですーー
素晴らしすぎて見入ってしまいました!!
嬉しいよぉぉぉ♪
【注意】
(1)UTAU音源としての「雛乃木まや」を描きました。天女などの一部設定等は反映されていません。
(2)まだ荒削りです。
登場人物
黒石響輝(くろいしひびき)
21歳 無職
学生時代バンドに打ち込んでいたが19歳で彼女を事故で失ったショックで声を失った。
本心では音楽が大好きだが、閉じこもって発声練習もサボるようになり成人になってからはほとんど外に出なくなった。
雛乃木まや【UTAU】(ひなのぎまや)
ある日響輝の元バンド仲間に、ツイッターで紹介されていて、試しにダウンロードしたUTAU。
画面越しだが響輝の気持ちを誰よりも理解し、彼の音楽性を引き出そうと努力する。
概要
19歳の時、彼女を失い声を失った少年、黒石響輝は21歳を迎えることには引きこもりになっていた。
24時間パソコンとにらめっこする日々。そんな中かつてのバンド仲間が紹介しているUTAU、雛乃木まやの動画を見た。
声が出ないからと音楽を諦めていた響輝だったが、「試しに使ってみるか」という程度の気持ちでダウンロードをした。
ダウンロードされたまやは響輝のことを知ってゆくうちに彼がまだ音楽を完全には諦めていないことに気づく。
反発しながらもまやの応援でまやの動画を作るために響輝は音楽への思いを再燃させる。
そしてまやの歌を作り上げた響輝に奇跡が起こるのだった
本編
(0)
もう2年になる。俺が声を失ったあの日から…。
目の前に広がる赤。大好きな彼女から流れる赤。
その日交差点の真ん中で声と愛する人を失った。
(1)【とある日 黒石響輝(くろいしひびき)】
空っぽの日々、寝て起きてパソコンとにらめこするだけの日々。
声を失ってから打ち込んできたバンドをやめ、もう音楽なんて諦めていた。
わかってるこんなんじゃダメなことくらい。そんなことを考えつつツイッターを見てた時ふと見つけたツイート。
『雛乃木まやにオリジナル曲を歌ってもらいました!』
思わずページを開いた。なぜかはわからない。ほんのちょっとした衝動だった
無料でダウンロードできるらしい。とりあえずダウンロードしてみるか。
これが俺とUTAU、雛乃木まやとの出会いだった。
(2)【3日後 雛乃木まや】
ダウンロードされて3日が経った。
私をダウンロードした本人は曲を作る気配が全くない。
なんのためにダウンロードしたんだろう。
部屋に置かれたギター。音楽やってる人なのかな。でもよくみると埃かぶってるや。
「ねえ、なんのために私をダウンロードしたの?」
“>わからない”
「音楽、興味ないの?」
“>ない。”
本当になんのためにダウンロードしたんだろう。あれ?手震えてる?
「…本当に?」
“>お前に何がわかるっていうんだ。”
確かに私はまだわかってなかった。
(3)【さらに3日後 黒石響輝】
もうそろそろダウンロードして1週間がたつな。
ちょっと触ってみるか。
「やっと私を触ってみる気になった?」
“>せっかくダウンロードしたしな。”
「前興味ないって言ってたけど実は音楽好きなんでしょ。えっと…。お互い自己紹介がまだだったね。」
“>俺の名前は黒石響輝。”
「私は雛乃木まや。よろしくね!」
“>ああ、よろしくな。”
「響輝ってさ、本当は音楽に興味あるでしょ?」
“>ない。”
「そっかー…」
“>もう諦めた。声が出せない俺に音楽なんて…。”
「もし声が戻ったらさ音楽やりたい?」
“>まあ。”
「じゃあ、私が響輝の声になる。」
“>え?”
「響輝の作った曲を私が歌う。それが今の私たちにできること。」
(4)【その次の日 雛乃木まや】
響輝が真剣だけど楽しそうにDAWをいじってる。
そんな彼を眺めている時間が一番落ち着くな〜。
絶対響輝の曲をヒットさせてみせるんだから!
(5)【そこから数日後 黒石響輝】
「どう?調子は。」
“>なんでそこまで俺に構うんだよ。やっぱり俺には音楽なんか無理なんだよ。”
「本当は響輝は思ってるはずだよ?まだ音楽を続けたいって」
“>鬱陶しいんだよ。お前はUTAUとかいうソフトウエアだろ?いつでもアンインストールできるんだぞ?”
「それでもしないでいてくれてるじゃない。」
“>うるさいな、わかったお前をアンインストールしてやる”
メニューを開いてアンインストールを押そうとした瞬間雷鳴が轟いた。
停電?まやは、消えちゃった…いやようやく消えてくれたのか?
「そう慌てなくても非常用電源つないであるから大丈夫よ」
まやの声が聞こえてホッと…なんかしてない。
“>誰も慌ててなんかねぇし。正直消えてほしかったし。”
「そう…。あのね、響輝が曲考えてる時の顔、とても楽しそうで好きなんだ。それに響輝、私の好きな和をイメージした曲作ってくれる。」
“>和のイメージになるのは偶然だ。”
「そうかな、私知ってるよ?和の曲をいっぱい聞いて勉強してること」
“>それは…。”
「音楽作ってる時の響輝が好きなんだ。画面越しだけど応援したいとも思った。」
“>俺の曲なんかでいいのか?他にもいい人…”
「響輝の曲を歌いたいの。」
“>…。アンインストールするの今はやめた。もうちょっとだけ残してやるよ。”
「うん!」
(6)【またさらに数日後 雛乃木まや】
“>歌詞はできたんだけどどうかな?”
「すごくいい!なんか私たちの今までっていう感じがして」
“>意識したのバレた?”
「うん、バレた(笑」
でもこんな風に思ってくれてたんだ。正直やっぱり私って響輝にとってはめんどくさい存在のかなって少し思っていた。
“>明日から曲つける。今日はもう寝るな。おやすみ”
「おやすみなさい」
どんな歌になるんだろう。楽しみだな〜。
(7)【その翌日 黒石響輝】
もうここまできたら何としてでも曲を仕上げてやる。
昔から何をやるにも三日坊主だった俺とはもう違う。今の俺には応援してくれる人がいる。
応援してくれるまやのためにも早く曲を作ってやる。一日中空き時間の無職のなめんな。
“>まや、どうだ。この曲。”
「1日で仕上げちゃったの?早いね」
“>居ても立っても居られないっていうかそんな感じで仕上げちまった。”
「それにこの響き、とても1日で作ったとは思えないよ!すごいよ。歌ってみる」
まやの歌声を聴いた時、俺がずっと閉じこもってた何かから解き放たれるような感覚がした。
「まや…」
声が出た。2年ぶりに声が出た。
「響輝…声……よかった。」
画面の中のまやが泣きそうな笑みを浮かべている。
これは一人の少年とUTAUが起こした奇跡の物語。